イシューからはじめよ

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

今の時代に大事なのは、「問題を解くこと」よりも「正しい問題を設定すること」というのが、この本のテーマで、いかにして解くべき問題を見極めていくかに大きく焦点が当てられている。筆者はそれを「イシュードリブン(Issue Driven)」と呼んでいて、問題の見極めをすることで、取り組まなければいけない問題は、問題全体の数%に減らせるとしている。


筆者はマッキンゼーコンサルタントを長く務めた方で、現在はヤフージャパンの経営企画を担当している。ロジカルシンキングMECEなどでも有名なマッキンゼー出身の方だけあって、文章は非常に論旨明快でわかりやすい。確かに、企業経営者や経営コンサルタントのように、問題(のように見えるもの)が膨大な人には、こういった絞り込みが必須なのだと思う。
労働時間でサラリーをもらうのでなく、アウトプットの質が厳しく要求される仕事に就いている方には、参考になる点が多いと思う。


その反面、一般のサラリーマンが「自分の仕事の進め方を改善したい」と思って読むと、ちょっと違和感があるかもしれない。一般のサラリーマンの世界で、「できる人」と「できない人」を分けているのは、問題を絞り込めているかどうかよりも、問題の根本を把握できているかどうか、だと思う。というのも、一般のサラリーマンは、問題自体は与えられるもので、それに取り組むべきかどうかという選択をする権利はあまりない。ただ、その問題が、学校のテストなどとは違って、抽象的であることが多い。(上司の指示に問題がある場合も多いが(笑))


抽象的な問題に対して、向かうべき方向を間違えて、意味のない努力を続けているような人は、結構、見ることが多いと思う。僕も、他のプロジェクトメンバーに、各自の課題を挙げてもらうと、「アプリ配信方式の検討」といった内容で挙がってくることが多い。この内容だと、「方式を検討するための時間やメンバーが足りないこと」が問題なのか、「方式自体にいくつかの案があって、どれにすべきか決められないこと」が問題なのか、はたまた全く違うのか、よくわからない。
トヨタの「なぜなぜ5回」のように原因分析を掘り下げる、というのはよく言われているが、問題自体を一段掘り下げることも重要である。うまく問題を掘り下げられれば、解決を他人に任せることもできる。


この本が提起した「問題設定の重要性」は、とても大事なことだと思うので、ターゲットを一般レベルにした本が出てきてもよいのではと思う。