伝え方が?割

電車の中で「伝え方が9割」という本の広告を見た。常々、物事をどう伝えるかって大事だよなと思っていたので、その本の題名に共感する一方で、自分の中にどこか納得できないというか腑に落ちない気持ちが残っていた。


腑に落ちないモヤモヤは何なのだろうと考えていたのだが、Amazonでその本のレビューを読んだときに、答えに近いものが見つかった。そのレビューは「中身が9割で、伝え方は残りの1割の中の9割」と書いていて、割合の正しさはさておき、伝え方よりもまず大事なものがあるということに強い同意を感じる。このレビュー自体は、知性や人間性を磨くことが大事という趣旨だが、ことコミュニケーション技術というだけの範疇でも伝え方以前に大事なものがある。


それは、自分が相手に何を伝えたいのか、相手に何を求めているのか、ということを突き詰めて考えること。伝え方が下手なために、理解してもらえなかったり誤解されたりすることもあるが、多くの場合は何を伝えるのかが曖昧なまま伝えてしまっていることが多い。また、何を伝えたいのか、相手に求めることが何なのかを具体化すると、必然的にその目的を達するためにどういう伝え方をするとよいのか考えるようになると思う。たとえば、あるトラブルを知らせるメールに返信するとき、いきなり感情のおもむくまま書き出すのは最悪で、自分はこのトラブルの原因を知りたいのか、部下が解決するための手助けをしたいのか、はたまた自分にはそのトラブルを起こした責任がないと言い張りたいだけなのか、その自分の願望を具体的に把握することがまずすべきことである。願望が把握できれば、どう伝えるかは自ずと決まってくるはずで、それをうまく表現できるかの巧拙は大した問題ではない。


伝えるという行為がどういうものかを伝えようとしてみると、外向的な行為である以上に内向的な行為なのだなと改めて思う。