駆け込み需要の経済学

一般に、経済学では税金が上がると消費が減って景気が悪くなると言われる。これは、消費税の増税に反対する論拠の一つにもなっており、景気が良くない現状で増税をしたらますます不況になると主張する人が少なくない。


だが、そう単純な話でもないような気がする。というのも、最近、保険会社に勤める人から次のような話を聞いた。その人の会社では保険の予定利率を引き下げたらしい。予定利率が引き下げられると同じ保険でも保険料が一律に上がる。つまり増税と同じようなことである。興味深かったのは、予定利率引き下げの前には膨大な駆け込み需要が発生し、その中には予定利率がそのままだったら保険に入らなかったであろう人もいたということ。駆け込み需要というと単なる需要の先食い的なものに思われるが、多少なりとも先食い分のプラスアルファを発生させているのではないかと思う。


日本の不景気の大きな原因は、食料品などの生活必需品が売れないことではなく、ある程度お金を持っている人たちが将来に不安を感じて、余分な消費をしないことである。そういった高額消費は、もしかしたら増税というイベントによって喚起されるかもしれない。


今、目の前に陳列されているものが明日に値段が上がると知らされたら、衝動的に今日買ってしまうなんてこと想像できませんか。太陽よりも、ときに北風が効果を発揮することもあるのではと思う今日この頃。