統率力の源

僕は子供の頃から、人の中心になって人を引っ張るというタイプでは、あまりなかった。あまり目立つことが好きではなかったし、運動神経が良くないために、望んでもキャプテンとかになれるようなことはなかった。


そんな風に生きてきただけに、初めて仕事でチームを任されたときには、正直、色々戸惑った。
その一番大きな理由は、自分には「カリスマ性」というのが、全くないこと。僕が子供の頃から読んできたマンガや小説では、リーダーになる人というのは、ただそこにいるだけで人を惹きつけるようなカリスマ性がある人がほとんどで、僕は人を統率するにはカリスマ性がなければいけないと、強く思っていたのである。


ただ自分が苦労しつつも、チームを運営してみると、これが必ずしも正しくないことがわかった。部下になる人は、別にカリスマ性をリーダーに求めていない。それよりも、自分が楽しく仕事ができて、達成した成果に充実感を感じられるといったことをリーダーに望んでいる。
そのことがわかったので、とにかくチーム全体のゴールを示して、各人がやるべきことを具体化し続けた。小さな成果でも、多少オーバーに感嘆するなんてことも、よくしていた。そんなことをしていると、意外に人はついてきてくれ、こっちがちょっと段取りに失敗したときでも、先回りしてカバーしてくれたりしていた。


結局わかったことは、超人的なカリスマ性などなくても統率力は得られるということ。戦場だと違うのかもしれないが、職場では「すごい上司」よりも「働きやすい上司」の方が部下はついてきてくれる。
そういえば、何かの歴史小説で、「百万人を殺せる人が天下を取れるのではない。百万人を食わせ続けられる人が天下を取れるのだ」といったような一節もあった気がする。