世界に一つだけの花

僕はもともとは、「世界に一つだけの花」という歌があまり好きではなかった。というのも、歌詞の中で、「ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」というのが、何か競争を否定しているような、みんな平等でいいじゃないか的なニュアンスを感じていたから。


ただ最近、違う解釈を感じてきたというか、作詞者が込めた意味がようやくわかってきた気がする。
同じものを見ていても、色の見え方や、どの部分に注目するかというのは、人それぞれ微妙に異なる。その違いを表現できないから、自分が平凡になってしまっているだけで、自分が感じたことや自分の感性は「オンリーワン」なのだと思う。


表現者で一流になった人は、大抵そのことをわかっていて、そういった人達が「他人にできない表現をしたい」とか「世の中になかった表現をしたい」と言うのを、あまり聞いたことがない。表現において、他者や外界を意識することはあまり意味がなく、表現とは常に、自分の内面をどれだけ精緻に捉えられるかという作業なのだろう。


特別なオンリーワンであるのも自分だが、そのオンリーワンを平凡なものにしてしまっているのも、また自分。「世界に一つだけの花」の中でも、もともと特別なオンリーワンだが、自分の「花」が勝手に咲いてくれるとは言っていない。