グーグル ネット覇者の真実

グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ

グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ

この本は、Kindle paperwhiteを買って最初に読んだ本なのだが、Googleのこれまでの幾多の葛藤や内部の秘話が克明に描かれていて、想像以上に面白かった。同社の中国事業が撤退に至る経緯など興味深い内容はいくつもあるが、僕が最も印象に残ったのはマリッサ・メイヤーという1人の女性。


メイヤーは同社創業期からのメンバーで、エンジニアたちの統括的ポジションを長く務めた。そのメイヤーが製品のデザインにダメ出しを続け、怒ったデザイナーが「このデザインの何がダメなんだ」と聞いたときの彼女の答えが、メイヤーのすごさを表している。彼女は、「人間の主観が入り過ぎているように感じる。Googleの製品はマシン主導であり、マシンによって作られている」と答えた。マシン主導とは、機能を中心に考え、その機能が最大のパフォーマンスを発揮できることを目指す、というようなことだと思うが、こうした判断基準を与えるということは簡単なようでとても難しい。


Googleのような、腕もクセもあるエンジニアが集まった会社は、方向性を見失って迷走するリスクを常に抱えている。「世の中の全ての情報を検索可能にする」とか「邪悪になるな」とかのやや抽象的な経営ビジョンだけでは、その迷走を防ぐことは困難で、先の言葉のような具体的な判断基準や針路の提示が必要だったと思う。自分たちは何者でどこに進めばいいのかという、Googleの「自分探し」に答えを与えたことの価値は、もしかしたらGmailGoogle Mapsを作ったことに匹敵するのかもしれない。


メイヤーは現在、業績低迷中の米YahooのCEOとなり、在宅勤務を廃止するなどの施策を打ち出して話題になっている。Yahooでも「自分探し」を終わらせ、業績を復活させることができたなら、彼女はIT業界に名を残す偉人になるだろう。