あるキング?

他人が映画を観たとか本を読んだとかいうときに、どういう話だった?と聞くことは誰でもあると思うが、その説明がわかりやすいことはあまり多くない。何が原因なんだろうなと思っていたら、これ以上ないほどわかりにくい説明に出会ったので、ちょっとネタにしてみる。


それは、伊坂幸太郎の「あるキング」という本の電車広告なのだが、全文を紹介すると「バットをもった孤独な王様が、みんなのためにホームランを打つ、そういう物語。」というもの。僕はこの本を読んでいないので本自体の内容が面白いかどうかは全くわからないが、この広告文を読んで「そういう話かあ」と納得する人は少ないと思う。


この広告文がわかりづらいのは、どこまでが比喩なのかがわからないことにある。普通に想像する「王様」はバットを持っていないので、ここに何らかの比喩が含まれているのは確かだが、バットというのも何らかの暗示なのか、ホームランを打つという行為も何かすごいことをするという意味での比喩なのか、考え出すと切りがない。Amazonであらすじを読んだところ、正解は、王様が天才野球選手の比喩なだけで、この話は正真正銘、野球の話なのだそうだ。
比喩の使い方だけが説明をわかりづらくする理由ではないが、自分が話すときにも比喩な部分とそうでない部分は明確にしようと思わされた。


さて、「あるキング」の広告文をわかりやすくすると、「ある孤独な天才野球選手が、みんなの期待に応えてホームランを打つ、という物語。」ということになるが、これだと当たり前というか、小学生の書いた物語のようになってしまう。つまり、比喩うんぬんもあるが、そもそも薄っぺらい広告文だということかな。