オーケストラの指揮者

僕はクラシック音楽にさほど興味がある訳でもないのだが、オーケストラというのはよくできた組織だなと思っている。それは、単にオーケストラがまとまっているというだけではなく、それぞれのパートを育成する仕組みがうまくできているということなのだが、最も感心するのが指揮者というパートに対する考え方である。

オーケストラの中で指揮者というのは、一つの専門職であって、どこかのパートで秀でた人が指揮者になるというのではない。 指揮者は、それぞれの楽器がどういう音を奏でるのかは知っているのだろうが、それぞれを高いレベルで演奏できる訳ではなく、その必要もない。また、名指揮者というのはいるが、別に演奏者より上位の立場にいる訳ではないし、指揮者より有名な演奏者だっていくらでもいる。

世間の指導者や管理者というのも、オーケストラの指揮者のような見方をされるようになるといいのにと思う。単に全体をまとめたり、コーディネートしたりする専門職であって、実作業をする人より上位にいるのではない。 帝王学やエリート教育というと、それを受けられない人が差別されているような印象を与えてしまうが、指揮者になるためのカリキュラムだと思えば、そんな大したものでない。

優秀な指導者や管理者が必要なのは、多くの人がわかっているし、そういう道に興味がないという人も少なくない。だが、一部の人を選別して指導者層を養成しようという話になると強い反発が起こる。そういう奇妙な空気が変わることが、リーダー不足解消に必要なのではないだろうか。
個々の演奏者がどんなに技量が高くとも、指揮者がいなければいい演奏にはならない。