厚化粧の文章

僕は新卒で銀行に入ったのだが、入社してみて非常に驚いたことが、社内で使う文章が文語調でとても格調高いということだった。例をあげればキリがないのだが、稟議書に「親会社の支援姿勢は依然として強固であることに鑑み」とか「本件実行による利鞘確保は可能と思料」とかいう文章が、社内にあふれていた。


入社当初は少し戸惑いつつも、徐々に会社はこんなものなのかなと感じるようにもなったが、どこかで「何か違うのではないか」という違和感が消えなかった。そして、他の会社に転職してみたりすると、その違和感が正常なものだったということがよくわかった。先の格調高い文章で言えば、簡単に言ってしまえば内容は「親会社の支援はしばらく続きそうだから」「本件は利益が取れる案件だと思う」ということに過ぎない。平易に言ったほうがわかりやすいのに、なぜか格調高くして、その結果として内容自体もわかりづらくなっている。


本当に大事なのは「なぜ親会社の支援が続くと言えるのか」「どういう根拠で利益が取れると判断したのか」ということのはずなのだが、そういった本質的な内容よりも、文章自体を装飾することに力を注いでいた気がする。
ブログを書いていても、あまり大した内容を言えていないと思うときに限って、無意識に難しい単語を使ったりしていることがよくある。そういったことが慢性化していくと、組織全体が本質的な検討よりも、自己弁護的な装飾を重視するようになってしまうのではないだろうか。


文章というのは、あくまでもツールに過ぎない。いい文章・悪い文章というのはあるが、それはわかりやすいかどうかといった点で判断されるもので、文章自体のカッコ良さではない。もしも、会社や新聞などで格調高い文章を見たら注意したほうがいい。その文章に中身はありますか?