固定費の呪縛

家電メーカーの赤字決算が次々に出ている。ソニーのテレビ事業は何年も続けて赤字、といったニュースを聞くと、何でそんな事業から撤退せずに赤字を垂れ流しているのか、と疑問にも思う人もいるのだが、ここでの「赤字」というのは「損が出ている」ということとは少し違う。


では、どういう意味なのかと言えば、「投資を予定通りに回収できてない」という説明が正しいと思う。いくらなんでも、単年度で使った材料費などの原価よりも売上が少ない、ということはないはず。大きな事業を始める際には最初に莫大な初期投資をして、それを何年かで償却していくのだが、この償却費を賄えないことで「赤字」になっている。


そういった事業を撤退してしまうと、固定費はかかり続けてしまうため、より大きな赤字になってしまう。この固定費の呪縛があるために、いまいち冴えない事業でもなかなか撤退の決断は下せない。他の事業が黒字ならば、撤退による損を出すことで減税効果も得られるが、全体的に冴えないとそれもできない。つまり、抜本的な改革が必要な状況になればなるほど、撤退の決断が難しくなっていく。


固定費は財務的に経営を不安定にする要素だと言われているが、それとともに経営判断を鈍らせる要素でもあり、もしかしたら後者の方が影響が大きいのかもしれない。