ビジネスリーダーにITがマネジメントできるか

ビジネスリーダーにITがマネジメントできるか -あるITリーダーの冒険

ビジネスリーダーにITがマネジメントできるか -あるITリーダーの冒険

海外の本の訳書だが、とある金融サービス会社で、事業部門(貸付など、その会社のメイン事業を実際に行う部門)のリーダーが、突然、IT部門の部門長に任命され、色々な問題に直面していく、というストーリー。
ストーリーと言っても、この本では問題の発生部分が大きくクローズアップされており、どうやって解決すべきかを読者が考えてみましょう、というスタンスを取っている。なので、小説というよりは、MBAのケース(実際の事例をもとに学生がディスカッションするもの)に近い。


この本の秀逸な点は、挙げられる問題が、机上の空論的なものでなく、IT部門が日々抱えるリアルな問題にとても近いこと。IT予算を、ビジネス部門が管理すべきか、IT部門が管理すべきか、といったことは、僕が勤める会社でも大きな議論になっており、毎年、少しずつ管理方法が変わっている。


アメリカでも、IT部門が抱える問題や、事業部門から言われることは同じなのだなと、つくづく思った。
ITという、一般の人にはよくわからなくて、でも会社がビジネスをするうえで必要不可欠で、かといって直接的に利益に貢献していることが非常にわかりづらい、というものの本質を、うまく捉えた一冊だと思う。


GoogleMicrosoftのようにITそのものが本業の会社と違って、通常の事業会社ではITは補助機能に過ぎず、IT自体が優れていても競争力には直結しない。ただ、最近のみずほ銀行のトラブルを見ていても、ITをマネジメントする力があるかどうかは、企業にとってとても重要だと思う。


財務や会計がわからない経営者は少ないと言われる。ただ、それは会計仕訳の細かい知識やデリバティブなどを駆使した財務戦略を、経営者が知らなければいけない、ということではない。あくまでも財務や会計をマネジメントできるかどうか、である。
同じレベルで、ITも語られるようになる日が来て欲しいと思うし、これからの経営者にはITマネジメント力が欠かせないものになってくるはず。