司馬遼太郎名場面集(4) 信長の比叡山焼き討ち

今回は司馬遼太郎のデビュー作とも言える『国盗り物語』から、革命家・織田信長を象徴する一言。

「十兵衛(明智光秀)、そちゃ、本気で仏を信じているのか」
「そちは知らぬと見えるな、あれは金属(かね)と木で造ったものぞな」
真顔で言った。
「木は木、かねはかねじゃ。木や金属でつくったものを仏なりと世をうそぶきだましたやつが第一等の悪人よ。つぎにその仏をかつぎまわって世々の天子以下をだましつづけてきたやつらが第二等の悪人じゃ」
「しかしなにぶん古き世より伝わりきたりしものでござりますれば」
「十兵衛、血迷うたか。汝がことごとに好みたがる古きばけものどもを叩きこわし摺り潰して新しい世を招きよせることこそ、この信長の大仕事である。そのためには仏も死ね」
(以上 本文からの抜粋)

織田信長が単に天下の覇者となることだけを望んでいたのなら、比叡山を焼き討ちにする必要は特にない。信長は自分の理想とする国家の姿を持っていて、後年の秀吉や家康とはそこに明確な違いがあると思う。
ただその国家ビジョンがあまりに急進的過ぎたことが、もしかしたら本能寺で暗殺される遠因だったのかもしれない。

徳川家康は「変化」を悪とみなす社会を作り上げ、それが結果的に200年以上の泰平をもたらし、今の日本人の精神構造にも大きな影響を与えたとされている。
歴史にifはないけれど、信長が天下を取っていたら今の日本はちょっと違った社会になっていたのかもしれない。少なくとも織田信成くんはフィギュアスケートをやってないだろう(笑)