伝える力

伝える力 (PHPビジネス新書 28)
著者:池上 彰
出版社:PHP研究所
発売年月:2007/5

自分の言いたいことを相手にわかりやすく伝えるためのポイントが、コンパクトにまとめられている本だと思う。箇条書き的にポイントが書かれているので、自分が「これは使える」と思ったものを試すだけでも効果がある。
「中学生にもわかる文章が理想」と言うだけあって、全体的に非常に易しく書かれていて読みやすい。

個人的には、前半は少し観念的な話も多いと感じたが、後半部分で述べられている「文章を書く際のポイント」は実用的でとても役に立っている。

いくつか内容から抜粋すると、
接続詞をなるべく使わない
「そして」「それから」のような接続詞は、文章が論理的であれば不要になる。論理的でない文章を繋げようとするところに接続詞が必要になるので、接続詞をなるべく使わないようにすると文章が自然と論理的になる。

順接の意味で「が」を使わない
「平日は100円で1ポイント付くが、土日は100円で2ポイントになる」のような文章は、本来逆接の接続詞の「が」が順接の意味で使われていて、論旨が読み取りづらい。上記の例文だと「平日は100円で1ポイント付くし、さらに土日は100円で2ポイントになる」とした方がよい。

「〜〜性」「〜〜的」という言葉にはごまかしが利くものが多い
「利便性」とか「効率的」という言葉は玉虫色的な解釈ができる一方で、具体的に何を言っているのかわからない。例えば「この案を実施することで、在庫管理業務の効率化が図れます」というよくある提案書の文言は、具体的に業務の何がどう改善されるのかわからない。「この案を実施することで、在庫の払い出しに要する時間が現在の3割になります」と言えば、具体的な内容がわかる。

今の仕事は資料を作ることがメインと言ってもいいので、特に3つ目の「〜〜的」とかの用語を不用意に使うと、先輩などから「ふわっとした表現」とされて、ボロクソに言われる(笑)

もちろん、あまり文章の細かいところを意識し過ぎて、作成のスピードが遅くなってもしょうがない。
だけど、ある程度文章を書くトレーニングを受けた人が読み手の場合には、この本でアンチパターンとして挙げているものが少しでもあるだけで、「この資料はその程度のレベルだな」という判断をされてしまうというのは知っておいて損はないと思う。