司馬遼太郎名場面集(3) 薩長同盟成立前夜の竜馬の言葉

竜馬がゆく」は言わずと知れた司馬遼太郎の名作なので、取り上げたい名場面も数多い。そんな中で、まずは作品のハイライトとも言えるシーンから取り上げてみる。

(状況:竜馬らの奔走で薩長同盟は成立直前までこぎつける。しかし、薩長のどちらから話を切り出すかという面子に両藩がこだわり、同盟の話は破談の危機を迎えていた)
「長州の側から、同盟の口火が切れるとおもうか。口火を切れば、もはや対等の同盟にあらず、おのずから乞食のごとく薩州に援助を哀願するようなものではないか」
できぬ、と桂(小五郎)はいった。
「もしそれをやれば、おれは長州藩の代表として、藩地にある同志を売ることになる」
「ば、ばかなっ」
竜馬は、すさまじい声でいった。
「まだその藩なるものの迷妄が醒めぬか。薩州がどうした、長州がなんじゃ。要は日本ではないか。小五郎」
薩長の連合に身を挺しておるのは、たかが薩摩藩長州藩のためではないぞ。君にせよ西郷にせよ、しょせんは日本人にあらず、長州人・薩州人なのか」
(中略:次に竜馬は西郷のもとへ行く)
「西郷君、もうよいかげんに体面あそびはやめなさい。桂の話を聞きながら、わしはなみだが出てどうにもならなんだ」
「長州が可哀そうではないか」
と叫ぶようにいった。
あとは、西郷を射すように見つめたまま、沈黙した。
これで薩長連合は成立した。
(以上、本文からの抜粋)
竜馬は、薩摩・長州とはかなり性格が異なる土佐藩の出身ということもあるけれど、「要は日本ではないか」という台詞には竜馬のスケールの大きさが表れていると思う。

この竜馬の台詞の「薩摩」と「長州」を「自民党」と「民主党」とかに変えて、福田さんや小沢さんに是非言ってあげたい。
(言う役は織田裕二か、織田裕二の物真似の人(山本高広)がいいな。何となく(笑))

竜馬は薩長同盟をこの段階まで持ってくるまでに、思想的な対立を武器や米などの経済的な協力で解消させていった。その過程は本当に面白いので、是非ご一読を。

対立している当事者間で、利害が一致できる点を見つけて結論に導いてゆくというのは、今風に言えばファシリテーションの技術で、坂本竜馬は日本随一のファシリテーターだったのかもしれない。