無料サービスにとっての利用者の存在とは?(4)

前回まで、無料サービスの利用者の存在とは?ということを考えてきたんだけど、今回は半ば余談がてら、銀行のATMシステムを例にして、無料サービスの収益源が失われるとどうなるってことを考えてみる。


よく誤解されてるのだけど、銀行にとって普通の預金者というのは厳密な意味での顧客ではない。銀行はただ預金をしてもらうだけでは、単なる預かり金で、売上にはならないから。


ただ昔は、色々な規制があって(この辺は長くなるので割愛)、預金というもの自体は利益にならなくても、実質的に預金を集めるとそれが貸出増につながり、利益に結び付いていた。


このために、預金を集める手段として各銀行が力を入れたのが、ATMなどのオンラインシステムで、その構築・運用コストに比べれば極めて安価に、銀行の各種サービスをどこにいても受けられるようになった。(よく銀行のATMなんて機能は少ないから、そんなにコストがかかるのがおかしいと言われることがあるけど、システムの構築・運用コストというのは機能の数だけでなく規模や求められる安定度によるところも大きい。)


それが時代は移り変わって、金融ビッグバンなんてのが起こり、さらに優良企業は資金の調達を借入などの間接金融から、社債などの直接金融にシフトしてしまった(この辺もかなり割愛)。その結果、預金を集めれば自動的に利益につながるという前提は完全に崩れ、ATMサービスは現状では各銀行にとってコストでしかなくなっている。


日本の銀行は公的資金を受け入れたとかで、預金者にコストを転嫁しづらいためにATMの料金体系は維持されていると思うのだけど、もしもっと経営に自由度があれば、かなり値上げ(もしくはサービスダウン)が図られていると思う。Webのサービスが将来、「昔は全部無料だったのにね・・・」とかいうことがないように、利用者にもWeb広告への「奉仕精神(?)」が必要じゃないかなと思う今日この頃。