規模と難易度

「遅れているプロジェクトに要員を追加してはならない、それはさらに遅延を拡大させるだけ」というのはプロジェクトマネジメントの有名な格言で、僕自身もプロジェクトの仕事をしていると、このことを強く実感することが多い。ただ、これがなぜなのだろうとずっと考えていたのだが、規模と難易度の関係に起因するのだろうということがわかってきた。


規模と難易度の関係というのは、人が多くなれば規模の大きなことをできるようになるが、難易度は逆に低いことしかできなくなるということを意味している。人が増えれば、どんなに選別をうまくしたとしても、能力や意欲のばらつきが大きくなっていく。この中で一定の成果をあげるためには、ある程度低めのレベルに揃え、全体の歩調を合わせるしかなくなる。逆に少人数であれば、そうした標準化的作業は不要で、難易度の高いことを成し遂げられる可能性はある(もちろん、少人数ならば常に可能ということではない)。


プロジェクトの進捗の話に戻ると、遅れた状態を元に戻すきっかけを作るのは、何らか複数の作業を並行させたり、生産性の高い(と思われる)新しいやり方を採用したりと、通常よりも難易度の高いことが必要になる。なので、このタイミングで人を増やしてしまうと、難易度の高いことに取り組むはずが、対応できる難易度のレベルは逆に下がってしまう。
進捗のリカバリーのきっかけができ、あとは量をこなしていくだけ、となったときに初めて規模が生きてくる。そのことを見誤って、遅れたらとにかく人を投入するというプロジェクトが世の中にはあまりに多いような気がする。


今が難易度を求められるフェーズなのか、規模を求められるフェーズなのか、それを見極めるのもプロジェクトマネージャーの手腕の一つなのだろう。